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国籍法12条と棄民政策

このブログの中のいくつかの記事、たとえば、「坂の上の雲」あるいは、「こんなやり取りが」または、「国籍法17条のまやかし2」で、国籍法12条は、棄民政策の残滓ではないのかと述べてきました。それは、国籍法12条の被害者の父となって、国籍法12条の目的は何なのかと考えた時、なんら合理的な理由が見つからないからです。過失を犯した人間を罰せずに、生後3ヶ月以内の子の国籍を剥奪するというのはなんとも異様な法律です。法務省の役人にこの法律の目的は何ですかと聞いても、「私は法律についての感想を言う立場にない。」と木で鼻をくくったような返事しかもらえませんでした。そこで思いあたったのが、この法律こそが、いわゆる棄民政策を完結するメカニズムではないかということでした。そこで棄民政策と国籍法12条の関係を調べようと思い立ったのですが、いかんせん、法律の知識はなく、インターネットで、関連書籍あるいはサイトを調べても、時系列で国籍法の変遷を述べた程度の情報しか見つからず、棄民政策としての観点からどのような改正が国籍法12条に行われてきたのかを述べたものは皆無でした。
私は移民ではありません。私の5人の子のうちダイチだけが棄民される理由もありません。他の原告も同様です。私は国際機関に勤務し、定年後その国際機関のある地に居住しているだけで、現住所は日本にあり、年に何回も日本を往復しています。感覚的には沖縄のちょっと先に住んでいるというところでしょうか。そういった私とその家族に対し、認知の4人の子には日本国籍を与え戸籍に載せ、、嫡出子のダイチの国籍は剥奪し戸籍への記載を拒否するという国の行為のどこに合理性あるいは正義があるのでしょうか。、国籍法12条は、棄民政策という、国としては恥じずべき国策を遂行する中で生まれた法律で、直ちに廃止されてしかるべき法律です。「千葉景子法務大臣へ:国籍法12条撤廃11.13アピール」でお願いしましたように、国籍法12条の執行停止は、政治レベルの判断で、国会で議決することで可能なのではないでしょうか。法務省、ならびに、現政権は、私如きに言われて行動したくないなどとは思わずに、国民目線の政権として、直ちに国籍法12条の執行停止をするべきではないでしょうか。悪法を悪法と知りながら執行することは、悪であり許されることではないのではないでしょうか。
今回の国籍法12条違憲訴訟の訴状に、国籍法12条と棄民政策について簡潔かつ公平な記述があります。法律の専門家ではないものの目で見ても貴重な国籍法12条の沿革変遷を知る法理論文となっていると思います。以下に抜粋します。

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第5 国籍喪失制度の沿革・変遷と現行法の立法目的
1 旧国籍法
(1) 明治32年制定当時
 日本国外で出生したことを要件とする国籍喪失の制度はなかった。

(2) 大正5年改正
 外国で出生したことを理由とする国籍離脱制度が創設された。
 20条の2第1項「外国に於て生まれたるに因りて其国の国籍を取得したる日本人が其国に住所を有するときは内務大臣の許可を得て日本の国籍の離脱を為すことを得」
 「外国に於て生まれたるに因りて其国の国籍を取得したる」とは生地主義国で出生した場合を指している。その立法目的は、南北米大陸での日系移民に対する移民排斥運動に対応するために、日本移民の日本国籍離脱を容易にし、出生地国の社会への同化を促進することにあった。すなわち、「当時南北アメリカ大陸に移住した日本国民の子孫が、生地主義により当該国の国籍を取得したにもかかわらず血統によりなお日本の国籍をも保有するため、当該国への忠誠を疑われるなど移民排斥の傾向が強まったことにより、この問題を解消して、移民の定着、同化を促進しようとするのが改正の動機であった。」(㈱ぎょうせい「外事法・国籍法」黒木忠正・細川清 379頁)。
 また、このときの制度は「留保の意思表示がない時に国籍を喪失させる」というものではなく、「本人の意思により日本国籍を離脱することを選択する権利を認める」という制度であった。すなわち、本人に日本国籍の離脱を認めることによって問題を解消することを企図していたのである。

(3) 大正13年改正
 国籍離脱制度に代わり、国籍喪失制度が創設された。
 20条の2第1項「勅令を以て指定する外国に於て生まれたるに因りて其国の国籍を取得したる日本人は命令の定むる所に依り日本の国籍を留保するの意思を表示するに非ざれば其出生の時に遡りて日本の国籍を失う」
 勅令で指定された国は、当初はアメリカ合衆国、アルゼンチン、ブラジル、カナダ、チリ、ペルーであり、後にメキシコが追加された。
 大正5年改正時に設けられた国籍離脱制度は、本人が当該制度を知らない、在外公館が遠方にある場合に手続ができない、などの事情により十分な問題解決にならないことから、制度の実効性を図って、留保の意思を表示しない限り日本国籍を喪失する、という制度に改めたものとされる(★引用元)。
 対象国を勅令で指定するとしたのは、日系移民の定着・同化に特別の配慮が必要な国で出生した日本国民のみを制度の対象とすれば必要かつ十分であり、全ての生地主義国で出生した日本国民の国籍を喪失させる必要はない、との判断に基づくものと解される。したがって、勅令で指定された国以外の生地主義国で出生しその国の国籍を取得した日本国民については同条の適用はなく、日本国籍を保持するための国籍留保の意思表示は不要であり、その結果として重国籍の発生は許容されていた。

(4) 以上の通り、旧法下の国籍喪失制度は、日系移民の移住先国への定着・同化促進を目的として、当初は国籍の離脱を認める制度として設けられ、後にその実効性を確保するために、国籍留保の意思表示をしない限り国籍を喪失する制度に改変されたものである。

2 現行国籍法
(1) 昭和59年改正前
 昭和25年に制定された現行国籍法は、9条で「外国で生れたことによってその国の国籍を取得した日本国民は、戸籍法(昭和22年法律第224号)の定めるところにより日本の国籍を留保する意思を表示しなければ、その出生の時にさかのぼつて日本の国籍を失う。」と規定した。
 対象国を「勅令を以て指定する外国」から全ての「外国」(生地国主義を採用する外国)に拡大した他は、旧国籍法20条1項の制度をそのまま承継した。
 対象国を勅令指定国から全ての生地主義国に拡大した理由について、現行国籍法の法案が国会に提出された際の逐条説明は、「本条は、国籍の抵触を防止する規定であって、出生による国籍の取得について、出生地主義を採用する国(中略)において生まれた日本国民は、出生によって日本国籍の他に出生国の国籍も取得し、二重国籍をなるので、かかる者については、戸籍法の定めるところによって、日本国籍を留保する意思を表示しなければ、出生の時に遡って、日本国籍を失うとしたものである。」としている(甲★号証)。また、同法の制定が審議された第7回国会の衆議院法務委員会において、村上政府委員は、「国籍の牴触防止の必要がありますのは、ひとりこれら特定の国における出生の場合だけに限られるものではありませんから、この法案では右の現行法の趣旨を、出生による国籍の取得について出生地主義を採用するすべての国において生れた日本国民に拡張することといたしました。」と説明している(甲★号証)。
 このように、現行法制定時の国籍喪失制度は旧法時代の仕組みをそのまま利用しているものの、その立法目的は「日系移民の移住先国への定着・同化の促進」から、「国籍の積極的抵触の防止・解消」に大きく転換したのであり、いわば制度が転用されたものである。

(2) 昭和59年改正(現行制度)
 すでに述べたとおり、現行法12条は喪失制度の対象を、生地主義国で出生した者に限らず、日本国外で出生し外国籍を取得した日本国民全てに拡大した。このように適用範囲を拡大した趣旨は「父母両系血統主義の採用に伴い増加する重国籍の発生を防止することにあるが、国籍選択制度とともに国籍の積極的抵触の防止、解消を図るための重要な制度である」とされる(前出「外事法・国籍法」379頁)。このような制度は「外国の法制にも例のない日本独自な制度」(ジュリスト790号79頁、「〔座談会〕国籍法改正に関する中間試案をめぐって(下)」における山田鐐一名古屋大学教授(当時)の発言)であるとされる。

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